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一貫して市民派の新聞として活動してきた本紙は市民主体の政治のひとつの方向性として〈緑〉を追い求めてきた。メイク・グリーン≠掲げ、地方自治体議員を中心にした〈虹と緑〉の活動、〈緑〉の海外情報などを積極的に報道してきたのも本紙の姿勢であった。
恐ろしいまでの異常人気の小泉政権成立により自民党は先の参議院選挙を圧勝したが、それは必ずしも自民党の「盤石」を意味しない。むしろ市民の政治的選択はハッキリしてきたのではないだろうか。信頼できる政党の不在はマスコミ予想に反し投票率の低さにあらわれ、新しい選挙制度の有利な展開を目論んだタレント候補は軒並み落選。「聖域なき構造改革」を掲げた小泉首相は国民にいまさらのように「痛み」を強いるが、市民はすでに〈痛み〉を自覚症状として気づいてきた。
そしてこの間、旧態の政治的呪縛に絡められた既成政党がますます人びとから乖離した存在であることもハッキリした。靖国参拝から同時多発テロ、報復戦争を支援する特措法設置への動きはメディアを含めた狂騒曲である。一方で外務省腐敗、狂牛病の隠蔽、失業者の増加、特殊法人、不良債権、山積する問題はいつしか鎮魂歌になりかねない。
この数年、「市民派の政党を!」という議論が興りは消えてきた。
記憶に新しいところでは「平和市民」があり、地方から全国政党をめざしたの「市民新党にいがた」の果敢な挑戦があった。「市民新党にいがた」が招へいしたフランス緑の党A・リピエッツの来日は私たちを大いに刺激したことは周知の通りである。また〈虹と緑〉も地方・地域の活動を基盤にしながら、政党への模索を潜在化させている。
実際、自治体選挙では市民派の進出は著しく、宮城県にはじまり、栃木県、長野県、千葉県などの首長選挙で市民派が勝利してきた。しかしその過程で「無所属」「無党派」であることが勝利への必須条件となり、私たちも市民派であることを曖昧模糊とさせてしまった感がないだろうか。
先の選挙結果をふまえ、私たちはいまこそ既成政党によらない市民による市民派の政党を結ぶべきだと判断し、活動をはじめた。そして幸いにも昨年の衆議院東京21区補欠選挙を勝ち抜いた川田悦子さんが私たちの〈緑〉の呼びかけに応えてくれた。
当選から1年を迎える川田さんの孤軍奮闘ぶりは本紙でも紹介してきたが、党に属さない国会議員の活動は想像を絶するものがある。先の国会では70余の法案に目をとおし、疑義を調べ、賛否の判断を下さなければならない。それをほとんど1人でこなすのである。
いま地方分権、地方への権限移譲が進められる時代にあるが、市民にひろがる慢性的な「政治不信」はややもすると国政レベルでの政治の機会を見失いかねない。自治体選挙での市民派のさらなる躍進とともに、国政は「これでいいのか」の想いは私たちと川田さんとの接点となり、新しい政党を〈緑の〉の下にもとめることでも意見の一致をみた。そのためには実現可能で目に見える形での政策が提示されなければならない。
そこで政策の研究立案をはかるべく川田悦子さんを代表者にした緑の政策集団「緑の政策研究会YUI―結―」を結ぶことになったのである。その趣意書についてはすでに本紙154号に掲載済みなので、ご覧いただきたい。
「緑」を志向する集団は過去にも環境派を中心にさまざまな形でいくつかあったが、明確な形での実現をみていない。そのために「日本では〈緑〉はムリか?」の危惧もあったし、それはいまも払拭されたわけではない。
〈緑〉の先進国であるドイツ、フランスなどの緑の党に学びつつ、この国独自の「緑の可能性」を実現するためには〈理念〉だけではなく、個別具体的な政策の深化と実現可能性のある政策の提示が何よりも必要である。それは〈緑〉が環境主義一辺倒を脱し、しかしあくまでも環境を基軸にすえ、緑の切り口で政治的エコロジーを論じることである。平和や人権、医療や福祉、労働、原発、交通問題、フェミニズム等々、あらゆる政治的課題をどうこの国の〈緑〉の視点からとらえるか。
すでに各地域、分野には〈緑〉への志向がみられ、接近法にも濃淡があるだろう。だからこそ私たちは〈緑の道標〉を示してお互いに結び、分かち合うことを実現していきたい。
―結―は講師をお呼びしての勉強会、さらにそこでの討論をふまえての政策討議と、月2回の定例会、必要に応じて臨時会を開催している。自らも既成の政治的呪縛を解き放った人びとと川田さんを中心にした集団は新しい政治への流れを意識してテンションの高い議論を進めている。運営上、勉強会は公開しているが、政策討議の研究会は会員中心に進めている。勉強会は随時参加、政策研究会へは恒常的参加をお願いしている。
9月開催の第1回は「小泉政権と特殊法人」のテーマで五十嵐敬喜氏を囲んだ勉強会を開き、後日、政策討議をもった。なお、10月18日には当面かつ緊急課題である労働・雇用、ワークシェアリングについて、緑の政策に詳しい真下俊樹氏を囲み、今後の労働、雇用の在り方を検討する予定である。
市民派の新聞「ACT」の読者こそが「緑の政策研究会YUI―結―」のよき理解者であることは言をまたない。研究会は本紙の限られた紙面を借りて、ダイジェスト的ではあるが、研究会の経過と討議内容を随時公表し、さらにまとめてブックレットを作成していく予定である。〈緑〉へ向け多くの読者の参加をお願いしたい。
戸沢 行夫(編集委員)
[本紙156号掲載]
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